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7月号:野良猫? スッポン? 女番長ソウル
女番長と書いて“スケバン”と読む。汚れた社会に牙をむき、己が信念を胸に、ナイフ一本握り締める孤高の不良少女。実態はともかく、昭和の街の片隅には、そんな様式美の塊のようなアンチヒロイン達が、タバコふかしてやさぐれておりやした。おチビな小学生(「ナニ見てんだよ!」と絡まれる対象外)なのをいいことに、駅前でタムロする眉毛のないおネエちゃんたち、よくチラ見してたなぁ(危ないっての!)。今回は、そんな女番長な歌手を紹介いたします。あ、でも『スケバン刑事』等の、“アイドルが男性ファンの眼を意識しつつワルぶる”系列は除外ね。逃げない・媚びない・屈しない、「3ない」あっての女番長ですから!
【 野良猫のアッコ ―和田アキ子 】
女番長歌手といえば、この人抜きには語れないでしょ。身の丈174cmで柔道初段、空手もたしなむ猛者であり、地元・大阪では、700人もの舎弟を牛耳る女番長、ミナミのアコ。押尾学もびっくりな不良ライフの傍ら、15の頃からジャズ喫茶「ナンバ一番」の人気シンガーやってたんだから、これだけで映画1本撮れちゃうよね。今ではテレビ露出の大半がバラエティ番組で、マトモに歌が聴けるのは『紅白』ぐらい。エラそうにしてるけど、ホントにすごい歌手だったわけ?
と、若い世代に揶揄されがちなアッコさんだけど、まずは昔の曲を聴いてみて。ちょっぴりハスキーでパンチの効いた声に、スピード感溢れるグルーヴ。今でこそR&Bを歌いこなす女性ボーカルなんて珍しくないけど、洋楽が浸透し始めたばかりの当時の日本で、このブラックな雰囲気は奇跡だったのであるよ。もっと歌手としての彼女を大事にしてあげていれば……この人本当は面白キャラではないし(うまくイジってくれる人がいないと、結構辛い)、ホント勿体ないことしたと思う。映画『女番長
野良猫ロック』(70年)で演じた主役、“流れ者のアコ”。シャイで朴訥、セリフも棒読みで不器用さ丸出しだけど、バイク乗ったりナイフ持たせると、とてつもなく輝きだす。これが彼女本来の姿なんじゃないかな。ゴーゴークラブで、モップスをバックに「ボーイ・アンド・ガール」を歌うシーン、カッコよかったし。そのまま野良猫・アッコのカラーを確立し、地道に歌手活動してたなら、今頃どんな感じだったろう。ファンとしては、そんな未来も見てみたかったなぁ。
【 お蝶の玲子 ―池玲子 】
70年代初頭、わが国は空前の女番長映画ブームだった。『野良猫ロック』の梶芽衣子、『ずべ公番長』の大信田礼子、『高校生番長』の八並映子……。中でも人気だったのが、東映のクイーン・オブ・ピンキー・バイオレンス、池玲子である。デビュー時のキャッチフレーズは“大型ポルノ女優”(ポルノという冠がついた初の女優)。看板に偽りナシの巨乳は、堂々の98cm!
まぁ、巨なのは乳だけじゃないんだけど……今なら100%樽ドルって呼ばれてるね。色白で大きな瞳、口元には色っぽいホクロ。怖い役ばかり演じてる玲子サマだけど、見た目は優しく母性的。そういう人が鞭やナイフ振り回して大暴れする姿に、観客はカタルシスを感じたのだろう。女番長って言っても、ダメな落ちこぼれじゃなくて、お嬢様学校を裏で仕切るゴージャス女王様風。あばずれやっても、どことなく品があるんだよな。そんな向かうところ敵なしの玲子サマ、人気絶頂期に「脱ぐのはもう嫌」と突如女優引退宣言。「第二の南沙織になる」って、歌手に転向したわけですが……。シングル「変身」(72年)は、吐息交じりのセクシーボイスで頑張ってるんだけど、わざとらしさばかり目立ってイヤラシさ半減。歌唱力もイマイチだしね。予想通りレコードの売れ行きも悪く、夢を諦めた玲子サマは東映に頭を下げ、再びポルノ女優として最盛期を迎えるのでした。引退作から復帰作までの空白期間は、わずか半年。この潔さはスゴイよね。復帰後のシングル「お蝶のブルース」(73年)は任侠歌謡。玲子サマの鼻にかかった歌声と、ぴったりマッチした傑作なり。
【 スッポンの美樹 ―杉本美樹 】
東映の女番長モノで池玲子とツートップを張っていたのが、杉本美樹。玲子サマがセレブ番長なら、美樹サマは街の不良をそのままスカウトしてきました〜って感じの庶民派。無表情な顔立ちに、反抗的に光る眼と尖った唇。暗いしぶっきらぼうなんだけど、そんなアンドロイドっぽさがクールでカッコいい。スタイルもいいし、とにかく絵になるんだよね。代表作『0課の女
赤い手錠』(74年)の裸で銃構え、『温泉スッポン芸者』(72年)の振袖芸者姿でバイクぶっ放し、今の時代でも十分グッとくると思うよ。この人も映画の主題歌を中心に歌っていたんだけど、セリフ同様、歌も棒読みで、お世辞にもウマイとは言えないです。でも、すごく一生懸命に歌ってるひたむきさが伝わってくるんだよね。なんか健気で、思わず抱きしめたくなる(瞬時にケリ入れられそうだけど)。おマヌケな曲も、恥ずかしそうに笑いながら歌ってる姿が目に浮かぶし。ポルノ女優だけど可憐な部分も持ち合わせている、非常に奥の深い女優さんです。
【 さそりの芽衣子 ―梶芽衣子 】
眼光の鋭さナンバーワン! 海外にも多くのファンを持つ、日本が誇るアウトロー女優である。芽衣子サマの出世作と言えば『野良猫ロック』(70年)と『女囚さそり』(72年)。美人だけどシャープすぎて使いづらく、干され気味だった青春映画女優は、この2作で「クールで危険」な独自の世界観を確立しました。ワルだけどハートは熱い『野良猫』の芽衣子サマが、『さそり』では寡黙で非道な女復讐人に大変身。役作りは彼女自身のアイデアだったそうで、スタイルに対する揺るぎない自信が感じられます。そして『さそり』と言えば、主題歌「恨み節」。ドスを効かせた節回しや、吐き捨てるようなセリフ調の歌詞を盛り込んでるけど、芽衣子サマの声自体は透明感溢れていて美しい。コテコテの演歌も、彼女のエアリーな声を通すと洗練されたポップスのように聴こえるんだよね。当然、そんな美声を大物たちが見逃すはずはない!
『去れよ、去れよ、悲しみの調べ』(74年)は松任谷正隆、なかにし礼、かまやつひろし等、豪華メンバーが楽曲を提供した、ソフト・ロック歌謡アルバム。『さそり』全盛期に、等身大の女性・梶芽衣子を平気でサラリと見せちゃうとこがサスガ。
イメージなんて、ちっぽけなコト気にしない。そんなスケールのデカさを感じる1枚。
【 パンチのやす子 ―内藤やす子 】
ひと昔前まで、女番長の頭髪はチリチリパーマと決まっていた。髪の痛みも省みず、バチバチにパーマ当てることがワルの証。とはいえ、デビュー時の内藤やす子のビジュアル・インパクトは凄かった。だってこれ、ちょっと伸びただけのパンチパーマだろ!
ワイルド(強面)な顔にハスキーな声。「弟よ」(75年)で、レコード大賞新人賞を受賞した時のパンツスーツ姿も、男前すぎ。小4でジミ・ヘンドリックスにハマり、中学生でジャズ喫茶通い。その傍ら浪曲師・二葉百合子のもとで修行を重ね(不良化する娘を更正するため、預けられたらしい)、和・洋ふたつのソウルを身につけた、やす子サマ。演歌のようなブルースのような、カテゴライズの枠からはみ出た魂の歌は、そんなルーツから生まれました。ハスキーなんだけどガラガラじゃなく、柔らかく暖かい声。酸いも甘いも噛み分けた説得力があるんだよね。こういうのって単に歌がうまけりゃ湧いてくるものじゃない。和田アキコは惜しげもなくパワーをぶつける歌い方だけど、この人はグッと抑えてお腹に溜めてから、バーンと前に出してくる。歌に母性や色気が宿っているのは、きっとそのせいだな。
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『内藤やす子
ゴールデン☆ベスト 内藤やす子
ダメな男ほどサ、何故か愛しいんだよね。なんて、大した恋愛経験ないクセに、グラス片手にやさぐれたくなっちゃう1枚。宇崎&阿木のゴールデンコンビが手がけた大ヒット曲「思い出ぼろぼろ」から、昭和の名ポップスカバーまで、満足の内容。 |
【 ボディの順子 ―三原順子 】
最後は80年代を代表する女番長、三原順子(現・じゅん子)……ってより、『3年B組金八先生』(79年)の山田麗子ですな。クラスを仕切るツッパリ美少女、このドラマで順子サマのイメージは完全に定着いたしました。今や伝説のセリフとなった「顔はよしなよ、ボディボディ」。つまりは「顔殴ると先公にバレるから、ボディだけヤキ入れてやんな」ってことでしょ。おお怖ェ。中森明菜、工藤静香、南野陽子と、ツッパリはアイドルの登竜門のひとつであったものの、ここまでハードかつリアルに不良少女を演じてくれたのは順子サマだけでした。
80年にシングル「セクシーナイト」で歌手デビュー。本人はアイドルとしての売り出しに抵抗があったようで、ドラマ『GO! GO! チアガール』では共演の宮脇康之と恋人宣言するわ、アイドル番組のコントでは、やる気なさげに隅っこでダレてるわ、やりたい放題。当時は松田聖子と二分していた人気もガタ落ちしたんだけど、もともと女優志望だった彼女には、痛くも痒くもなかったのかも。順子サマ自身、「18歳で映画『ああ、野麦峠』(82年)に初主演して、やっと脱出できた」と語ってるし。同年リリースのシングル「だって・フォーリンラブ・突然」は、横浜銀蠅・TAKU作曲の軽快なロックンロール。すべて吹っ切れた順子サマの歌声、アイドル時代よりもずっと可愛らしいです♪
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『セクシー・ナイト』
三原順子
当初はポスト山口百恵として、大きな期待を集めていた順子サマ。わざと低めに抑えてドスを利かせた歌い方には、百恵ちゃんの影響が色濃く出ていますね。 現在は入手困難なベスト盤、再販激しく希望!! |
怖くも美しき女番長たち、まだまだ語りつくせないけど、長くなりそうなので今回はこの辺で。続きはアタイの行きつけのサ店で、どうだい?
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カルメン・ミキ
経歴・年齢不詳。表向きは最新チャートに敏感な、J-POP好きなモテ系セレブ。しかし、その実体は・・・。 昭和歌謡曲満載のiPodを片手に非日常の夜を闊歩する、エビちゃんよりもエバちゃんを、宇多田よりも藤圭子をこよなく愛する、ライター界の欧陽菲菲。 |
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