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Image Works in Yasudacho, Kochi 安田町オフィス

2015/02/20

Image Works普遍的映像美

  フィンランドを代表する作曲家シベリウスをご存知ですか。モーツアルトやベートーヴェンなどの超有名な作曲家と比べると馴染みがないと思われます。クラシック音楽に疎い私にも初めて耳にする名前ですが、縁あって生オケで「交響曲第2番」を聴く機会をいただきました。

シベリウスは自身の愛するフィンランドの自然の情景や古くから伝わる神話の世界観を音楽で表現することに熱心に取り組みました。フィンンランドというと、厳しくも静謐な美しさを持った北欧独特の自然の情景が思い浮かびますが、「交響曲第2番」はそんな自然を愛するシベリウスらしさが全面的に表現された作品と言われています。

  初めて聴くシベリウスは非常に難解でした。

  第1楽章、澄んだ美しい風景で始まったかと思うと一変し、突然雲行きが怪しくなります。そのまま不穏な盛り上がりを見せたかと思うと、希望に満ちた旋律がそれを吹き飛ばし、元の平穏な風景に戻ります。楽器ごとの短いパートが繰り広げられて、なかなかユニゾンにまで発展してくれません。やがて激しい旋律と穏やかな旋律が交互に現れ、混沌と静けさの間で大きく振さぶられ混乱していると、ふいに音楽が高ぶり、確信に満ちた第1主題のユニゾンになだれ込みます。このユニゾンから始まる第4楽章は圧巻です。「厳しい自然に打ち克ち、その美しさと共に生きられる喜びをニ長調で爆発させた」と評される通り、からだの中に豊かな感覚が残るのを実感しました。しかしまたすぐに、不安な揺らめきを帯びた第2主題が始まり、二つの主題は複雑に分解と結合を繰りひろげながらクライマックスへ。

シベリウス交響曲第2番二長調作品43 カラヤン/フィルハーモニア1960  http://youtu.be/i5QiY20__Z8        最初から聞くことをお勧めしますが、第1主題のユニゾンへ続く山場だけ聞きたいかたは25:00ごろからがいいでしょう。

  シベリウスは音に色彩が見える能力の持ち主だったそうです。そして自然の花や木々の色彩を見ると音が聞こえた。自然を音と色で捉えていたのですね。

  この曲に魅かれて何度も聞き返していると、難解と感じさせていた短いパートの林立、その一つ一つにシーンが浮かび、シベリウスの描く自然の情景がはっきりと見えてきました。自然を構成する無数の要素——木や動物、川、雲、花...そして人。木には木の、それぞれにはそれぞれの悲しみやよろこびの物語りがあり、それぞれに違う音楽を奏でながら、ときに同じ旋律でユニゾンを奏でる、その瞬間の美しさは言葉ではあらわせません。映像や音楽でしか表現できない美しさなのでしょう。

高知県梶ヶ森

「交響曲第2番」で描かれる自然の情景は、北欧に限定されない普遍性を帯びています。私には時折、高知の自然の情景——厳しくも美しい自然と、そこで共に暮らす人々の情景が想い浮かびます。

  東京映画社は高知の自然を舞台に、この普遍的な美しさを持つ映像の創出を進めています。また、自然を構成する要素の物語りに目を向けた映像アーカイブも始動させました。

このコーナーでは、映像班からのレポートを「Field Notes」として定期的にご紹介していきますので、また訪れてご覧いただけたら幸いです。

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