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Column

Image Works in Yasudacho, Kochi 安田町オフィス

2015/09/22

Image Works自然に従うということ

自然は、その姿を刻々と変化させ、私たちに思いもよらない”美しさ”という驚きを与えてくれます。木々や花、水は自然の光と自然の風の中にあって、ありのままで美しく、色彩と形を変えながら揺らめき、その移ろいゆく一瞬に輝きを放ちます。そして、あらゆる瞬間にいたるところで小さくとも劇的な変化が起きていて、それが人の視点で切り取られて初めて、ひとつの美しい風景として認識されます。

この”変化”こそが自然の法則で、刻々と変化する一瞬の輝きを撮るということ、それは自然を意のままに捉えようとしてできることではなく、自然に従うことで得られるものと言えるでしょう。自然の中に入り、まるで獣や昆虫の目線で最高の一瞬を待つ。何度も取り逃がしながら、その1カットを得るのです。こうして、目では見ていても捉えられなかった一瞬の美しさがそこに表現されます。

高知県東部の中山間部にスタジオを構え、フィールドワークを制作の基盤に据える東京映画社の映像からは、初めて身近なものに美しさという概念を認識した時の原体験を呼び起こす、深い心象体験を得ることができるでしょう。



本当に自然というものはままなりません。

思う通りに撮れなかったり、撮りこぼしたり。頭に描く絵が明確であれば、なおさらです。カメラマンには「自然だから仕方がない」と諭され、「仕方がないじゃないでしょ」と内心で反抗してはみるものの、どんなにあがいてもその一瞬は二度と訪れることはなく、また来年、もっといい瞬間を捉えるために準備をするしかないのです。でもこの失敗もフィールドワークのひとつで、この知識の積み重ねが財産となっていきます。

「自然を捉えるのではなく、自然に従うこと」前述したこの言葉は、巨匠モネのセリフです。自然を色彩で捉えようとしたモネは、描くそばから変化する自然の色彩を何度も塗り直しながら、この境地に至ったとのこと。自然を思い通りに撮れないと言っていちいち落ち込んでいる私はまだ、巨匠の境地にも、カメラマンの境地にも程遠いところにいるのです。

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