ソフトボールで汗を流していた頃には、ゴルフの世界に華やかなイメージを抱いていた白戸選手。実際にプロゴルファーとなってすぐにシンデレラストーリーのような展開が待っていたわけではない。
「プロテストを合格しても、まだゴルフ場にいて、トーナメントに出るための予選というのが常にあるわけです。それも年に1回だったり、半年に1回だったり、システムによって変わるんですけど、それを受験しながら試合に出る。練習と試合、練習と試合っていうのがずっと」
練習ひとつとってもチームプレーであるソフトボールとのちがいは大きかった。
「今ではコーチがいるのが当たり前の世界になってきているけど、その当時は個人、個人なので、自分でスケジュールや練習内容を決めなければいけない。だからそういう部分では、いつも誰かに見られているじゃないけど、自分が嘘ついたら、練習の手を抜いたら、ゴルフの神様は見てるんだっていう思いでやっていたかな」
練習計画の管理も、試合中のミスも「全部、自己責任」となるのがゴルフの厳しさ。ソフトボールのようにチームメートのフォローもなければ、「投げられなくても、3割打てれば最強バッター」と言われることもない。
さらにゴルフはプレーヤー個人の経済的負担が大きいスポーツでもある。
「大体今、年間、34試合で、宿泊代、プレー代、交通費っていうのが、黙っていても試合に出場するだけで出ていってしまうとなると、年間500~600万かかるんですよ。所属があれば契約金で、全部でなくともまかなうことができる。それを賞金だけで稼ぐとなると、シード選手で1500万前後、年によって上下しますけど。賞金の額はあっても、抜かれるものも大きいので、生活として成り立たせるには、最低シードっていうのがあるんですよ。でも、それもかなわない人がほとんどなわけで、生活としては結構ひどかったりするんですね。かたや有名な選手はいろんなスポンサーがつく。だから平等じゃないの。同じ土俵というものがあっても、背負っているものがちがう」
ゴルフというスポーツの醍醐味を味わうよりも、「精神的なストレス」の方が大きかったという。それでも練習を重ね、試合でいい成績を残せたときの「よろこび」や「達成感」は、何ものにもかえがたいものがあったのだろう。アマチュアとプロフェッショナルでは、試合で結果を出すことの重みも当然異なってくる。
「安定はないですよね。1年1年勝負だから。それはどのスポーツでも、プロスポーツ選手は一緒。不安になるのは当たり前。不安はつきものだし、不安や心配なんかはいつも一緒、隣り合わせ」
精神力の強さがたえず問われるプロスポーツの世界。表立っては見せないけれど「負けず嫌い」という白戸選手は、他のスポーツ選手の本を読むなど、メンタル面の強化に意識的に取り組んだこともある。
「メンタルの先生について指導を受けたこともあったんですけど、自分で変わりたいとか、こうしたいっていうものがないと、やらされてるんですよね、結局は。何が強いって、やはり思いでしょうね。思いが強い人は変われますね」
そう語る白戸選手も大きな壁にぶち当たった時期があった。
(続く)
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